世界の家作りの歴史を考えると、
必ずその土地で手に入る素材が使われます。例えばヨーロッパの家をイメージすると石造りが思い出されます。
北米カナダはログハウス。住んでいる地場から材料を調達、家とはそういうものなのです。
日本は木の文化が世界的に見て突出している国です。温暖湿潤な気候は樹木が育つ環境としては理想的です。そんな木材資源の豊かなこの国で、木の文化が成熟してきたのはごく自然なことだと思います。
先人たちが育んできた科学的で合理手的な大工技能のバトンを、次の世代に渡すことが預かった者の責任だと思います。日々の生活の為だけの仕事ではなく、短い人生を充実させる、生き方としての仕事をこの先も続けていけたら幸せです。
私は集成材や合板を木材だと思ったことはありません。木を原料とした工業製品だと思っています。否定するつもりはありません。
それぞれ特徴にあった使い方を私もしています。
ただ木材と同列に語ってほしくないだけです。
例えば合板を使った野地板(屋根下地板)。年数が経ち解体すると無垢の野地板より腐りが大きく感じます。思うに合板の構造上湿気は 逃げづらいからです。
集成材で使われている接着剤はこの先剥がれたりしないのだろうか。5枚貼りあわせた板が柱なのに上下逆になっていることがよくあり、大工としては違和感が充満します。
結局木材も製材される前は山に生えていた植物であり、生き物だったのです。
こちらの都合で殺したのですから死骸は丁寧に扱ってあげなければと思ってしまいます。
大工になり20年になります。(この写真は私です)
未だに木の木目と色と匂いに惚れてしまいます。
完璧に物をこしらえても木目の綺麗さには勝てません。
それで考えました。自分の技を見せる物作りではなく、木目を引き立たせる物作りだな。
綺麗な木目を見るとその木の出身地に思いを馳せたりします。
木造住宅、コンクリート住宅、鉄骨造住宅、外観を見ても内観を見ても違いが判らない。床はフローリング、壁天井はビニールクロスで覆われていて構造は二の次です。
雑誌で古民家を特集していました。柱、梁、桁、小屋組み、風雪に耐えてきた頑丈な木組みです。複雑に組んである小屋組みは、まるで芸術家の作品のようです。百数十年後の日本人に感動与える建物。百数十年経ち、本当に技術は進化してきたのか疑いたくなります。
百年後とは自分から数えて5代先の子孫が生きている時代です。そんな時代の子孫が誇れる、木組みの家を
建てていきたいです。
木の家のどこがいいですか?と聞かれます。
40年前に通っていた小学校は木造平屋、片流れ屋根で「鳥小屋」と馬鹿にされた校舎でした。
35年前に通っていた中学校も木造平屋の校舎でした。
教室の床板は何十年もの間、生徒に蝋と雑巾で磨かれ黒光りしていた南部赤松でした。
本当に節穴が開いていました。外壁も薄汚れた杉の下見板でした。
昭和50年代は当たり前に木に触れていました。
いつからか日常から木が無くなり、特別なものになった。
「癒される」
「湿気を吸ってくれから、からっとする」
「いい匂い」
「肌触りがいい」
「柔らかい」
「あったかい」
「なぜか懐かしい」なんて昔の我々は考えもしなかったのですが、「当たり前」が「特別」になった今では木の力が見直されてきました。
日本人のDNAに木との相性が刷り込まれているような気がします。
家作りには色々な職種の職人さんが関わってきます。
大工舎の家の特徴は左官屋さんと建具屋さんです。
どちらも今の一般的な住宅建築には影が薄い存在です。
壁はビニールクロスに代わり、建具類は建材メーカーのカタログから選ぶ時代です。
しかし、大工舎の家は基本的に壁は漆喰の左官仕上げで、建具は全て建具屋にオーダーメイドです。
どちらも仕上げ方、デザインはお客様との打ち合わせで決めていきます。出来上がりは、漆喰の持つ調湿効果、殺菌効果、静電気を帯びないので埃が付きにくいなど大変機能的です。
建具も既製品にはない本物の美しさがあり、木の家になくてはならないものです。
もうひとつ関わってもらっている理由があります。
それは大工と同じで職人の数が減っていること。仕事は現場があってこそ学べるものです。
微力でも減少のブレーキになれば、仕事を見てひとりでも志す人が出てくれば、という思いです。
大工舎の家の特徴はなんですか?と面と向かって聞かれますが、スラスラ出てきません。
家によって、ホーム会社によって「売り」というもがあります。
キッチンが対面でアイランド型、ユニットバスが高グレード、デザイナーによるおしゃれな外観。
うちはなんだろう。いつも当たり前になってしまって、自分のアイデンティティーが見えなくなってしまいます。
<極力合板類、集成材は使わない>言葉では簡単ですが、いざ実行するとなかなか難しいです。それだけ慣れ親しんでいたという事です。
<昔ながらの手刻みの構造体>複雑な木組みを実現する為に、また大工技能を伝承していく為、無垢材の能力を活かす為。
<なるべく自然素材を使う>仕上げ材はもちろん、断熱材、内部仕上げ塗料までも。
<打ち合わせから設計、施工まで>最初から最後引き渡しまで大工舎代表の平戸が行います。
<出来ないとは言いたくない>技術的なことで出来ないと言いたくありません。お客様の希望になるべく近づけます。
<職人の学びの現場>職人が作り上げる建物です。既製品を貼りつける家ではありません。現場が鍛えてくれます。